ssができました。
以前ちょろちょろっと書いてたネタを膨らましました。
思いの外長くなってしまったので、前後篇にわけてます。
最近導入が長くなる傾向にあるなぁ……。
ありがちネタです。
ナル麻衣ではありません。あくまでナルと麻衣。無糖です。
つづきからどぞ~。
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前篇
静かな夜だった。
コンピュータの前で作業をし、リビングのソファで本を開き、たまに紅茶を飲みながら休息する。いつもの夜だ。
極めて独り言が多いわけでもないし、遠い異国で暮らしているため特に電話が掛かってくるわけでもない。母国からの連絡はメールが主で、電話が掛かってくるとしてもその相手はほとんどが両親である。しかし、こちらの性格を十分に知っている彼らは様子を訊ねてくる程度で、そう頻繁に掛けてくるわけでもない。音楽を聴く趣味はないし、リビングのテレビも滅多に出番はなくほとんど置物と化している。そのためこの部屋には自然と無機質な音しか存在しない。
少なくとも数年前、実家で生活している頃は様々な音に溢れていた。家族四人での生活では、深夜でもない限り、生活音がどこからか聞こえてくるのは仕方のないことだろう。その上、両親は明るい性格で兄は喧しかった。自室に篭っていても弾んだような会話が聞こえ、運が悪いときは巻き込まれる。どれだけ嫌そうな顔をしてみても家族に効くことはなかったし、むしろ嫌がるのを楽しんでいる節もあるから非常に面白くなかった。職場にはくだらない連中も多かったが、拒絶をすれば散っていく分
日本へ来て数年、そんな生活から遠のいた。自身が立てる生活音など高が知れているし、来訪者も無いに等しい。稀に隣に住んでいる部下が訪ねて来ることもあるが、彼の性格上話すと言えば仕事の話ばかりで、最低限の生活をしていれば私生活に特には関与してこない。音を発生する要素がないのでは、静かでないはずがない。一般的には寂しいと感じても良いのだろうが、生憎そんな情緒は持ち合わせていないようなので特に問題はない。
日本では寧ろ職場の方が喧しかった。こちらで雇った調査員も事務員も、事務所を喫茶店か何かと間違っている連中も、喧しいことこの上ない。イレギュラーズはどれだけ皮肉を言ってやっても、こちらで言うところの暖簾に腕押し、糠に釘、馬の耳に念仏だ。首を竦めてみせはするもののそれは形ばかりで、全く意に介していない。時には聞くふりさえもせずに、「そんなことより」と一言で流してしまう。何とも面の皮の厚い連中だ。調査員はそんな奴らと一緒になって騒いでいるし、彼女は粗忽者の代表のような人間だ。事務所の騒音源とも言っても過言ではない。事務員は彼らと比べれば静かな部類だ。有能で仕事もでき、羽目も
そんな理由から、日本では自宅の方が穏やかに集中できていた。この日も、いつも通りに静寂の中に身を置き、仕事に没頭していたのだが、突然のチャイム音に集中が乱される。部下が何か用件でもあるのかと思ったが、彼はいつも訪れる前に電話で確認をしてくるため恐らく違う。それに、今のチャイム音は下のオートロックの方の音だった。訝しく思ったが、仕方なく書斎からリビングへと出る。このときは、このチャイムが生活を一変させることになるとは知る由もない。もし知っていたのなら、間違いなく聞こえないふりをした。
このマンションはパトロンからの援助で借りている。パトロンの一人が日本にマンションを所有している知り合いがいて、そこでよければと提供してくれた。住む場所は移動に便利なら特にこだわりもなかったのでここに決めたが、恐らく安くはない部類の部屋だろう。1階にはコンシェルジュが常駐しており、各種サービスが受けられる。出掛けるときや帰宅時に一々声を掛けられるのは面倒だが、以前はホテル暮らしだったため慣れている。さらに、洗濯はすべてクリーニングに出すため、コンシェルジュ・サービスが受けられるのは便利だった。住んでいる部屋の間取りは3LDK、広さも一人暮らしには十分過ぎる。完全オートロックと銘打っており、当然コールチャイムではなくインターホンが設置されている。
リビングに出ると、インターホンのカメラが反応していることで、矢張り一階に訪問者がいることが書斎から出てすぐに分かった。
その映像を見て、一瞬思考が止まってしまったのは仕方がないだろう。
ナルはらしくもなく目を疑った。軽く眉を顰めて、通話ボタンを押す。相手もそれに気付いたのだろう、おずおずと名乗った。
「あのー、谷山ですけれどもー」
そんなの見ればわかる。事務所の調査員であるところの谷山麻衣が、インターホンを前に居心地悪そうに立ち尽くしていた。
けれども一応状況理解の為と、見間違いであればいいという意味を込めて聞いてみた。
「麻衣?」
「あ、よかったナルだ。そうです、麻衣です。ナルー、開けてー」
何が良かったというのだ。こちらからすればちっとも良くない。
「何故?」
「何故って……そりゃぁ入れて欲しいから」
「どうしてここにいる」
「ナルの部屋があるマンションだから」
「そういうことじゃない。……何か用か?」
「え、あ、うん、そう。用があるの!」
詰まった言葉に泳いだ視線。これほど嘘が下手な人間も珍しい。とてもまともな用があるとは思えない。
「緊急を要するのか?」
「火急の! 切迫した! 大っ事な用が!」
「明日にしてくれ」
「え、ちょっ! ま……っ!」
有無を言わさず終話ボタンを押してやった。プツンと画面がブラックアウトする。
何なんだ、あいつは。
ナルが麻衣と出会ったのは彼女が高校一年生のとき。もう五年も前のことになる。このマンションに移り住んで二年。麻衣がこの部屋に入ったのは、引越しの手伝いだと言ってぞろぞろと喧しい者たちを引き連れてやってきたそのとき一回だけだ。それが突然訪ねてきた。
再びチャイムが鳴る。麻衣に違いない。しかし、無視する。
一体全体何だというんだ。突拍子もない行動をするのは麻衣の十八番だが、巻き込まれて楽しいはずがない。しかもあの表情。確実に面倒事を引き込んできたに違いない。
自然と眉間に皺が寄る。しかし、事務所で言えば良いことを、わざわざここまでやって来たのだ。何か彼女なりにのっぴきならない事情があるのだろう。三度チャイムが鳴ったときは
多大なる譲歩だ。溜め息が漏れる。
ふと思い出したように時計を見遣れば、そろそろ日付も変わろうという時間になっていた。仕事に集中していたため、全く時間を気にしていなかったが、益々眉間の皺は深くなる。
本当に、こんな時間にこんな場所で何をしてるというのだ。
恐らく鳴るだろうと思っていたチャイムが中々鳴らない。もしかしてあのまま帰ったのだろうか。こんな時間に?
いくら世界的に治安が良いからと言って、時間が時間だ。ここまでは一人で来たのだろうが、だからといって知ってしまった以上気にせずにはいられない。恐らく本人も自覚していないが、ナルは意外と弱者に甘く正義漢である。
全くあの馬鹿は。
不本意ながらもリビングを出る。あのまま引き下がったとしても、そう遠くへは行っていないだろう。
玄関に向かおうとしたところで、チャイム音がした。しかもこれはオートロックのチャイム音ではない。
「……新聞ならお断り」
「ちょ、ちょっと! 押し売りじゃありませんから!」
とりあえず開けてー、と言う情けない声が廊下に響いていたので、仕方ない、と腹を括った。近所迷惑甚だしいことこの上ない。
ドアを開けてやれば案の定へらりと笑った麻衣が立っていた。
遠慮がちに
「どうやって入った」
「いやぁ、どうしようか迷ってたらちょうど出てくる人がいて。しれっと入ってきちゃった」
完全オートロックとはよく言ったものだ。ナルは小さく舌打ちする。
「フロントで怪しまれなかったのか」
「そうそう。あたしもドキドキして入ったんだけどさ、ちょうどいなくて助かったよ」
こちらはちっとも助かってない。
コンシェルジュは警備員も兼ねている。所用で席をはずしていたのか、見回りをしていたのか。
「招かれざる客が入ってきてしまった」
「まぁまぁ、そんなこと言わずに~」
気楽そうな笑顔が少しばかり腹立たしい。ナルは疲れたように息を吐いた。
「……それで? 何か用か」
「えーと」
麻衣は言い難そうに頬を掻く。ここまで来ておいて何をそんなに躊躇うと言うのか。
「さっさと言え」
「あのさぁ……えーっと、ちなみになんだけど、ナルの部屋って間取りなんだっけ?」
間取りがどうした。と思わず口から出そうになったが、話が長くなるだけなのでやめておく。
「……3LDKだが。それが何か?」
「さんっ! なっなんて贅沢な!」
その台詞は二年前にも聞いた。他人の部屋に押しかけて早々、「ひろっ! ありえないっ! 贅沢っ!」と煩かったのを覚えている。
「あっ、もしや誰か同居してたり?」
「……だったら?」
「え、まじ!? それって、リンさんとか、リンさんとか?」
「リンは隣。知ってるだろう」
引越しの手伝いと称して騒ぎに来たとき、彼らはリンの部屋にも押しかけていた。
「いや、非経済的だから引っ越したのかと」
「麻衣ほど切迫してない」
「そりゃそうでしょうよ。……え、じゃあ、女の人とか?」
ひょいと奥を覗こうと首を傾かせた麻衣の視界を自身の身体で塞ぐ。腕を組んで見下ろせば、肩を竦めた麻衣はみるみるうちに萎んでいった。
「あ、ごめんなさい。お邪魔して。……やっぱりそんなに急用じゃなかったや。明日事務所で話すね」
それではー、と言った麻衣はそのまま回れ右をしてドアノブを握った。溜め息を吐く。
「馬鹿か。生憎一人暮らしだが」
馬鹿とはなんだ、と麻衣がぷぅと頬を膨らました。
「聞いたことないけど恋人でもいるのかと思って」
「そう見えるか?」
「……見た目的には十分。中身的には極悪なので微妙」
本人を目の前に麻衣は気にせず言う。ナルも麻衣の悪口には慣れているのか全く気にした様子はない。
「でも世の中には中身より外見、という人がいるのも事実。しかし、五年の付き合いがあるワタクシとしましては、ナル側の内面的な判断を加えまして、いないに一票」
自信ありげに指を突き出した麻衣には答えずに、ナルはシニカルな笑みを返して自身を指す手を払った。麻衣は払われた手をわざとらしく擦(さす)りながら、「聞いておいて答えないなんて」と不服そうに口を尖らせた。
「で? くだらない話は終わりだ。要件を言え」
「あーっと……ちなみに3LDKの内訳は?」
「一体さっきからなんなんだ」
「ちなみにだよ、ちなみに」
問答している時間の方が勿体ない、とナルは諦めて端的に答える。
「書斎、ベッドルーム、物置」
淡々とそう言えば、麻衣はぱぁっと明るい顔になる。ナルには全くもって意味がわからない。
「物置で良い!」
「は?」
何のことだ。
「お願い! しばらく泊めて!!!」
玄関から蹴りだして鍵を閉めてやりたいと思ったのは言うまでもない。
後篇につづく
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妙に長くなってしまいました。
読みにくいですよね^^;すみません。
あ、こういうのを拍手お礼にすればいいのか(今更)。
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