ナル、ジーン
誕生日おめでとう!
少し時間が空いたので忘れない内にお祝いの言葉を言っておきます。
忘れっぽい私ですが、この日だけはずっと忘れないと思います。
何もしないのもあれなので、以前ここに上げてたssの続きをば。
ちなみに以前と言うのは2011.11.01でした……申し訳ないです。
前回は前篇としていましたが、長くなったので3話編成です。
3話目も書き終わってるいるので近々またここでアップします。
※ちなみに1話目です。クリックプリーズ。
全く誕生日関係ないですが、読んでくださる方はつづきからどうぞ。
誕生日おめでとう!
少し時間が空いたので忘れない内にお祝いの言葉を言っておきます。
忘れっぽい私ですが、この日だけはずっと忘れないと思います。
何もしないのもあれなので、以前ここに上げてたssの続きをば。
ちなみに以前と言うのは2011.11.01でした……申し訳ないです。
前回は前篇としていましたが、長くなったので3話編成です。
3話目も書き終わってるいるので近々またここでアップします。
※ちなみに1話目です。クリックプリーズ。
全く誕生日関係ないですが、読んでくださる方はつづきからどうぞ。
中篇
さて、この世界は様々な人間で構成されている。
種族で言えばホモサピエンスと一括りに出来るかもしれないが、細かく見れば遺伝子配列は千差万別である。性格は環境か遺伝かという論争は未だはっきりとした決着はついていないが、環境という要因を含めるのなら尚更、個々の性格や挙動を一括りに出来るはずもない。
しかし、彼の世界は極めて少ない人間で構成されている。
彼は大抵の人間を都合よく忘れてしまうからだ。それでも、その狭い世界でさえ多種多様な人間がいる。それは当然のこととして目を瞑ろう。ただ、大きな分類として、論理的思考を持ち、必要以上に他人と関わらない人間ばかりだと望ましい。そう常々思っているが、矢張り中々そうはいかないらしい。それにしても、むしろ感情的でお節介というカテゴリーに大別される人間が多いのはどうしてか。理想と現実の差異に悩まされる。
感情的かつお節介の代表であるところの彼女は、何故か何かに巻き込まれやすい。その『何か』の良し悪しは別として、大抵が予想だにしない事態を引き起こす。それは、彼女のお人好しな性格が原因なのかもしれないし、思慮に欠ける猪突猛進さから惹起(じゃっき)される結果なのかもしれない。しかし、それらとはまた別の範疇で彼女は何かに巻き込まれているようにも思える。
つまるところ、彼女はトラブルメーカーと呼ばれる人種である。まあ、有り体に言えばナルにとって麻衣は頭痛の種だということだ。
そしてたった今も麻衣はナルの元へ頭痛の種を運び込んだばかりである。
*
突然泊めろとはどういうことだ。
状況を一から説明しろ、と問い質して事情を訊いてみれば、ナルはこめかみを抑えるしかなかった。
「つまりはだ。火事でアパートが燃えて住む処がなくなったと」
「そうです」
「麻衣の部屋は直接的な被害はなかったが、消火活動で水浸し。落ち着くまでしばらくは友人宅を転々としていたところ、大家から電話が入り、燃えたついでに建て直しを決めたと言われた」
「ハイ」
「そして、建て替え工事の間住む場所がなくなった、というわけだな」
「そのとおり」
「……火災保険は?」
「入ってそうに見える?」
この状況で肩を上げながら鼻で笑ったその頭を叩(はた)いてやりたい衝動に駆られたのをナルは我慢した。当然でしょ、何言っちゃってんの、と言わんばかりの態度が癪に障る。
「……大家なり火元の家主なりに頼れ」
「あたしも知らなかったんだけどさ。もらい火の場合、隣近所へ補償する責任はないんだって。まあ、向こうも建物の修繕とかで大変であたしの世話までしてられないだろうし。それに、大家さんはずっとよくしてくれてたんだもん。これ以上迷惑掛けられるわけないじゃん」
火元は麻衣の住むアパートの隣の家だった。火元へ損害賠償請求することが出来ないから家具とかの補償ができないの、と大家さんが申し訳なさそうにしていけれど、一番大変なのは大家さんのはずだ。
「それでいい顔をして、はいはいと出てきて、結局宿無しになったというわけか」
呆れたように言うナルに麻衣はがくりと項垂れた。
「返す言葉もありません」
ナルは深く溜め息を吐く。大方、大家や火元の住人に心配かけまいと、当てがあるから大丈夫だとでも言っているのだろう。麻衣らしいと言えば非常に麻衣らしいけれど。
「常識的に考えて、こんなとき頼るのは友人だろう? 少なくとも職場の上司ではないはずだ」
「友達にはこれまでも散々泊めてもらってたし、学生の一人暮らしなんて部屋そんなに広くないから居候させてもらうのも悪いし、これ以上は」
ということは、火災が起こってから結構な日数が経っているということだ。そういえば数週間前に急に用事が入ったからとかでバイトを休んでいたことを彼は思い出した。
ホテルに泊まるなんてことは、初めから選択肢に入ってないに違いない。『不経済』という言葉は、最早彼女の口癖である。
「松崎さんはや原さんは?」
「綾子は今海外でいなくて、真砂子は実家だもん。頼めないよ」
何故実家が駄目なのかはナルにはわからないが、そうだと言うのなら安原も駄目だと言うことだろう。それならば。
「ジョン」
「ジョンは泊めてくれそうだけど、教会には他に教会を頼りにしてる子どもたちがいるんだし」
「喜んで助けてくれるんじゃないのか?」
「だから駄目なわけよ。ジョンは優しいからきっといくらでもいて良いって言ってくれるでしょ? 一日や二日なら頼むかもしれないけど、あんまりお金ないから部屋決めるのにどれだけかかるかわからないし、長く居ると負担になりそうで……」
「それなら、ぼーさん」
「ぼーさんちは部屋自体に色々と事情があるみたいでさ。それに、ぼーさんといっても年頃の男女が二人きりって、流石にまずいでしょ」
自分の方が年齢的には近いんじゃないのか、とナルは言おうとしたが、自分にはあまりに関係のない話題なのでやめた。その微妙な表情を察したのか、麻衣はあっけらかんと笑う。
「だってナルだもん」
何だその理由は。
そう勝手に全幅の信頼を置かれてしまっては、どこか面白くない。まあ、別にいいけれど。
「リンさんだって隣にいるし」
「それならばリンに頼め。都合のいいことに隣の部屋だ」
「こんな夜遅くに訪ねて行ったら、リンさんに悪いじゃん」
僕なら良いのか。
ナルは眉間に皺を寄せたが、そんなナルの様子を気にした風もなく、麻衣はもぞもぞとナルの後ろを見遣る。
ぴ、と麻衣が奥を指させば、ナルは「なんだ」と目で問うた。
「あのさぁ、立ち話もなんだから、そろそろリビングに移動しない?」
そうなのだ。ナルは一歩も玄関から先に上がることを許してくれない。まるで立ちはだかる壁のように腕を組んで麻衣の前に聳え立っている。
「それは家主である僕が決めることだろう。図々しい」
「だって疲れたよ。荷物は重いし、歩き回って足ぱんぱんなの」
「招いてもないのに、誰が上げるか」
「えー!」
「プライベートな空間に仕事は持ち込みたくないもので」
どの口がそれを言う!
麻衣は開いた口が塞がらない。
ナルのことだ。とっくに仕事を持ち込みまくっているに決まっている。それに加え人を仕事扱いしやがって。
少ないとは言えない量の荷物を持って歩き回って麻衣は非常に疲れていた。願わくは、温かい湯を張ったお風呂につかりたいし、ふかふかの布団に今すぐ飛び込んで寝てしまいたい。
玄関へ入るという大きな関門を突破したことで、正直今日は助かったと麻衣は思っていた。布団は贅沢かもしれないが、少なくともふかふかのソファを所有していそうな上司の家に泊まれそうだと思っていたのに。
麻衣はぷくりと頬を膨らませる。
勝手にオートロックを抜けて入り込んだだけで、決して関門を突破した訳ではないということは麻衣の頭からすっかり消え去っている。
勝手に膨らんだ期待をあっさりと無下にされ、麻衣は荒んだ目つきでナルを見上げた。
「ちぇっ! けちんぼ。これだから器のちっちゃい男は」
思わず出てしまった言葉に、ナルの纏う空気が変わったのを麻衣は感じた。
見上げれば、ナルが極上にして最恐の微笑みを浮かべている。麻衣は顔を引き攣らせて一歩後退った。この絵画のような美しい微笑みには多量の毒が含まれていることを十分過ぎるほど知っている。
「わかった」と、心無し音程の下がったテノールが玄関ホールに響く。
「確かに麻衣とも言えどこんな時間に外に放りだすのは忍びない。非常に不本意だが仕方がないから泊めてやる」
はれ? 怒ってるわけじゃない?
「ナル!」
所々気になるところはあるが、この際細かいことは気にしない。麻衣は嬉しそうに表情を明るくする。
意外とナルって良い奴じゃん!なんて思ったのも束の間。しかして次の瞬間、見事に奈落の底に突き落とされた。
「ただし! 玄関だ。ここになら居てもいい」
ふ、と皮肉気に笑ってナルはくるりと背を向けるとさっさとリビングへと消えた。
ぱたりと閉められたドアに、取り残された麻衣。握る拳はわなわなと小刻みに震える。
「性悪ーーーーーーっ!」
対する返答はなく、玄関ホールに少しだけ声が反響したのがとても空しかった。
麻衣は勢いのままに回れ右をして出て行こうか迷った。しかし、この時間から今日の宿を探すのもできれば避けたい。ドアノブを掴んだ手を力なく解くと、仕方がなく冷たいフローリングに座り込んだ。
「信じらんない」
いや、予想通りと言えば予想通りかもしれない。ナルともあろう人がすんなりとプライベートスペースに入れてくれるとはとても思えない。容易でないことは重々承知していた。
だからと言って、普通玄関に放置する!?
麻衣は腕を組んでナルが消えていったドアを睨んだ。物音一つしないし、ドアが開く気配もない。
段々と何の反応もないドアを睨み続けるのが馬鹿らしくなって、洋服やとりあえず生活に必要な細々としたものを詰めたバッグを枕にしてぽすんと倒れ込む。
コンシェルジュ・サービスという麻衣が一生味わえそうもないサービスが取り入れられているマンションは、1階のフロントも豪華なら各部屋の玄関ホールさえも豪華だ。大人二人が立ち話をしても全く狭さを感じないし、麻衣がホールに寝転がったとしてもあと三人分は余裕がありそうだ。麻衣がこれまで暮らしてきたどの家よりも豪華である。そして先日水浸しになった部屋とは比べるまでもない。彼(か)の部屋は玄関ホールと呼べそうな場所すらなかった。
「贅沢させるから我が侭、根性悪ぼっちゃんのままなんだー」
本人が聞いたら間違いなく罵詈雑言が飛んでくるようなことを言いながら麻衣は天井を見上げる。
あまりにも贅沢な投資は彼の才能へなのか、それとも稀有な能力や美貌へなのだろうか。世の中お金があるとこにはあるのだ。行くあてがなくて仕方なく他人の家の玄関に寝転がる者もいれば、他人の『厚意』から悠々自適な生活を保障されている者もいる。
確かに住めと言えば問題なく暮らせるほどこの玄関ホールは広いが、流石にそうはいかない。しかし、今日はうろうろと歩き回ってとても疲れた。明日のことは明日考えよう。
「お風呂、入りたかったなあ……」
麻衣は重くなっていく瞼に抗うことなく、静かに目を閉じた。
後篇につづく
----------
前篇に引き続き、読み難いですよね^^;
火災保険云々は全く詳しくないので、気にしないでくださると嬉しいです。
もしわかる方がいらっしゃったら教えてくださると尚嬉しいです。
後篇も忘れない内にアップします!
Happy birthday, twins!
PR
